明星

東雲あかりの現代詩

センチメンタルと遺書

君が
あの日の君のために書いた
宛名のない手紙は
何度も濡れて、乾くたびに
今では筆圧さえたどれない
干からびて黄ばんだ
便箋の
罫線に刻まれた
嘘っぱち
乾いた筆跡を
指先でなぞり
幾日、幾夜
おまじないの言葉を
そらんじて
君が唱えた
おまじないの数だけ
感傷的な神様が
幸せを約束してくれるとでも
きっと
あの日の君は
そう思ったんだね
さようなら
さよなら、センチメンタル