明星

東雲あかりの現代詩

明星

もう夜が明ける
月もなく
まだ日もない
東の彼方に
空がある
波間にゆらめく蜃気楼は
漁り火か
不知火か
そちらは暗く寂しいですか

かはたれどきの
廃墟の谷間に身をひそめ
瓦礫の輪郭を
ひとさしゆびでなぞっている
時雨のように泣いていた
耳朶の奥までしのび寄る
迎えにきて
迎えにきてと呼んでいる

探してよ
夜明けのとばりにつづられた
ゆびさきに残された記憶を
影絵の街並みに
埋もれたまま
あの空の
曙光にのまれゆく明の星
誰もいない
ブランコの隣で
身じろぎもしないで
待っているんだ
今もここで
待っているんだ



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