明星

東雲あかりの現代詩

残照のウルトラマリン

血だまりの中に顔を埋めて
息継ぎするように空を見上げたんだ
真っ赤な空だった
虹彩から忍び寄る
無重力な暗闇
乱暴に拭おうとして
肩先すら動かせないでいた
沈みかけの太陽が
西空の境界線で融け落ちて
姿をなくしたのに光は失われていなかった
あんなふうになりたかった

ねえ、小人の靴屋の話を知っている
夜毎に働く
はだかのこびと
まずしい靴屋が救われる
大事な仕事は
僕たちが目をつむっている間に
済んでいて
姿を知れば逃げていく

瞬く間に星があふれた
熱が唇から抜け落ちていくのがわかるんだ
何百万光年も先にある
灼熱の天体が放つまばゆい光を
どうして温もりのない優しい光と
感じてしまうのか
まるで瑠璃色に輝く鉱石だ
かすかにまたたいている

あの話には続きがあるんだ
文字も読めない貧しい女が
こびとの世界へ招かれる
産まれたこびとに名前をつけて
三日の間こびとと暮らす
つかの間に
七年の時が流れて
誰も女を覚えていない

星の光は
密度をなくした太陽の光だ
残照の消えた夜空に
数百万の星をちりばめて
漆黒の空を群青色に灯している
星の名前は誰も知らない
あのとき
ここにいた
僕の名前も
誰も知らない
ただ遠く離れて姿をなくしても
残照の夜空に似た
深い深い群青に
辺りは包まれている