明星

東雲あかりの現代詩

詩人になりたかった僕のために

ほら、にぎやかなスピーカーから
事件です、事件です、事件ですと
現場臨場を求めて
騒ぎ立てる深夜の喧騒
テレビジョンから垂れ流される
通信販売のアドセンス
眠れない人のために作り上げた
眠らない町の、眠らない警察が
二十四時間
君を守り続けてくれる監視社会で
コピーライトの付いていない
ことば を探して
商業ビルの非常階段や
しとどに濡れた植え込みの陰に
酔いつぶれたふりをして
寝そべっているんだろう

とっくに気付いているんだ

手垢の付いていない
ことば なんて
街では見つからない
君が書を捨てて町に出てから
いったいどれだけの
グラスを空にして
何万人の詩人や革命家が
反権力の尖兵として
保護房に隔離されたと思ってる
あそこでは
広告収入で残業代を支払って
法律用語で君を守ってくれる
そこから出ていく自由は
奪われてしまうのに

いっそこのまま溺れていたいんだ

ねえ、今こそ武器をとるんだ
君のての中に自由はあるか
そこに救いはなくても
ことば は今もここにある
赤い旗を掲げて
群集を煽動した女神のように
君のことばが必要なんだ
電源ケーブルを切断しても
インターネットに拡散した
君の自由は消えてなくならない
立ち上がれ
もう一度 孤独の中で
叫べ 冷たい壁に向かって
もっと  ことばを
もっと ことばを
もっとことばを