明星

東雲あかりの現代詩

閏月

ピアノが泣いて

雨はさめざめと降る 路地の合間を縫い 排水溝を満たし 世界中の隙間に流れ込む ぬいぐるみと眠る孤独な僕たちは 開け放たれた窓辺にもたれて ピアノの調べを奏でていた 水面をたたく雨だれは 張りつめすぎた感情の糸を響かせて 七日七晩降りつづければ かつ…

海へ行く

街には雑音が充満しているから 呼吸をするのもままならない 夜が訪れたなら 鏡に映したもう一人の自分を連れて、海へ行こう 地図も標識もない 誰かの足跡をたどりながら 冷めやらぬアスファルトを踏みしめて指先をつたう静脈血は止血をしても止まらない 身体…