明星

東雲あかりの現代詩

詩人になりたかった僕のために

ほら、にぎやかなスピーカーから 事件です、事件です、事件ですと 現場臨場を求めて 騒ぎ立てる深夜の喧騒 テレビジョンから垂れ流される 通信販売のアドセンス 眠れない人のために作り上げた 眠らない町の、眠らない警察が 二十四時間 君を守り続けてくれる…

テロル

半分だけ開かれた窓から 遠くの丘にそびえ立つ コンクリートで造られた神様の 上半身を眺めながら 何日も何日も 奴隷のように 自慰に耽っていたんだよ時には 神様の首から上がお前に見えて 恐ろしさに震えながら 性欲の有り処を 懸命にまさぐって 背徳感に嗚…

センチメンタルと遺書

君が あの日の君のために書いた 宛名のない手紙は 何度も濡れて、乾くたびに 今では筆圧さえたどれない 干からびて黄ばんだ 便箋の 罫線に刻まれた 嘘っぱち 乾いた筆跡を 指先でなぞり 幾日、幾夜 おまじないの言葉を そらんじて 君が唱えた おまじないの数…

耳鳴り

傷口は傷痕に変わり 昨日とは違う今日に 今日とは違う明日に もう道に迷うこともかなわない 今ですら 潮騒の遠鳴りをたどり 足跡の消えた砂浜を探して 空を仰ぎ 航跡を追う 変わらない街並みと 変わらない記憶と 変わらない感情と 変わらない営みと 変わらな…